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第2回 やまぐちYY!ターンカレッジ イベントレポート

2021.9.24

2021年8月24日開催 やまぐち×自分らしく暮らせる場所編

今年度は、山口県って「意外にいいかも!?」という視点で、「やまぐち暮らし」を深堀りしている「YY!ターンカレッジ」。第2回のテーマは「自分らしく暮らせる場所」で、ゲストは「半農半Xコンセプト」の提唱者・塩見直紀さんと、竹の有効活用事業を行うエシカルバンブー株式会社代表取締役社長・田澤恵津子さん。地域に複数の拠点や関わりを持ちながらも、山口県へIターンされたお二人にお話ししていただきました。

「海峡の街・下関から、新しい発信や表現を生み出したい」

◉塩見 直紀さん

京都府綾部市出身の塩見さんは、大阪での約10年の会社員生活を経て、33歳で故郷の綾部にUターン。約20年住んだのち、2021年3月から一人っ子である奥様の故郷である下関に電撃的に移住されました。塩見さんは「半農半X」の提唱者。「農」は農業、「X」は天職を当てはめ、農業を営むことで環境問題と向き合いながら、自分らしく生きる、という生き方を25年前から提唱されています。塩見さんの著書は中国・台湾・韓国でも出版され、現在はベトナム語版の翻訳も進行中。街に隠れた「X」を見つける「Xフォト」を撮るという趣味にも、塩見さんの遊び心が表れています。

塩見さんは、故郷の綾部をはじめ、学生時代に伊勢(三重県)、会社員時代に大阪、嵐山(京都府)などに住まれた経験を踏まえ、「下関は嵐山に近づけるポテンシャルがある!」と力説してくださいました。その魅力はまず「海峡の街」の美しさ。関門トンネルを往復して、職場である北九州市立大学へ通勤する中で海の見える風景に癒されると言われます。「関門海峡は1日4回も潮の流れが変わるのですが、そこに地球のリズムを感じます。それをもっと活かしたいですね」と、新たなアイデアが生まれる予感も。

また、下関が詩人・金子みすゞと、明治維新の志士・高杉晋作ゆかりの地であることを魅力に感じると言われ、みすゞの「みんなちがってみんないい」という視点と、晋作の遺した句「おもしろきこともなき世をおもしろく」の姿勢を大切にしたいと考えられています。さらに、下関は、塩見さんが提唱する「『1人1研究所』社会」のきっかけを生んだ街。世界の77億人が、1人ずつ自分の研究所をもち、自分なりの人生のテーマを深め、その結果を共有することで社会の可能性が広がるという考えで、12年ほど前に下関の街を歩いているときに見つけた「腹話術研究所」という看板から、アイデアが膨らんだそうです。

魅力と並んで気づきもあり、例えば下関の「ふぐ」。「あちこちで見かけるふぐは、名物としては大切にしたほうが良いと思いますが、新しい視点での下関の魅力を見つけたい」と。塩見さんは、ご自身が美術博士でもあるので、デザインの視点からアイデアを考えられているようです。また、大学生をはじめ若い世代に出会う機会が多いからこそ、「若い感性と下関の魅力の掛け算が実現すれば、最高の街にすることもできる」と期待をもたれています。

30~40代は綾部で農業を営みながら、移住者の受け入れに携わっていた塩見さん。住む場所を問わず、価値観を共有できる人との出会いが、その人らしいライフスタイルを実現しやすくすると話されます。「30年前なら車で行ってやっと同じ価値観の人と出会えましたが、今は徒歩圏内で出会えるという感覚があります。行政の方も地域の方も、価値観が近い人が多く、そういう時代なのだと感じます」。さらに、下関市で8月から移住相談のワンストップサービス「移住の窓口住まいる☆下関」が始まったのも耳よりな情報。そして何より大切なのは「自分から与える“give”の姿勢」だと言われ、「私達はつい“ください、ください”となりがちですが、与えられる人が田舎暮らし、地方暮らしに向いていると思います」と、経験をもとに話してくださいました。

里山から海峡の街へ移住された塩見さんは、「家族を大事にしながら、新しい試みに挑戦したい」と話されます。「古川薫の『関門海峡』ではありませんが、下関は瀬戸内海、日本海、九州に繋がっていることから、海流・潮流を活かして日本中に発信することができると思っています」と塩見さん。「実際にはできないけれど、ボトルレターのように手紙を下関から日本中に流すように、『1人1研究所』という考え方や、もっと人生が楽しくなるような考え方、ヒントを発信したい」と話す姿に聴き手もワクワクして引き込まれました。

「理想の暮らしを叶えられたのは、山口県だから」

◉田澤 恵津子さん

東京都出身の田澤さんは、ご両親も東京生まれの生粋の江戸っ子ですが、「竹」をきっかけに山口県へ移住されました。百貨店、商社、人材派遣、電機メーカー、広告代理店、化粧品メーカーなどで働かれ、商品開発・商品マーケティング・プロモーション企画業務を行う中で、竹との運命的な出会いを果たし、竹の有効活用事業を行う「エシカルバンブー株式会社」を創業されました。東京と山口を行き来されていましたが、コロナ禍をきっかけに、現在はほぼ100%山口で暮らしています。

田澤さんが山口県を拠点に選んだのは、ビジネス的な4つの理由からでした。1つ目は「竹のミネラルの研究開発をしていた」から。「山口県は全国4位の竹林面積があり、いわゆる“竹害”に対して県が率先して取り組んでいます。せっかくなら困っているところで事業をしたいと思いました」と田澤さん。2つ目は「自然災害が少ない」こと。工場を造っても、自然災害が多ければ製造に影響が出ます。「待っていてくださるお客様のために出荷を止めたくない」との思いから、防府と宇部の2ヶ所に工場を造り、リスクマネージメントを行っています。そして3つ目は「良質な水源がある」こと。竹の洗濯洗剤など、製品の原材料として湧き水が欠かせないものだからです。そして4つ目は「国際港がある」こと。将来的に輸出を考えている田澤さんにとって、下関などの国際港があるのは大きな魅力。東京では輸出入の手続きにとても時間がかかるそうですが、山口県はスムーズだと言われます。そして、市や地域が協力的なのも大きな理由。拠点のある宇部は2020年版「住みたい田舎」ベストランキングの総合1位に選ばれたこともあり、移住者を積極的にサポートする体制があると言い、宇部市の公式ウェブサイト「宇部移住計画」から情報を得ることができます。

山口県の魅力を田澤さんに挙げていただくと、まず海の幸・山の幸が美味しいこと。山口県で初めて釣りをしたときに、90cmのタイを釣り上げた田澤さんは、料理を何品も作ってパーティーをしたそうです。また、ビワやスモモ、クワの実など、旬の果物や野菜のおすそ分けがあるのも日常。そんな田舎暮らしはもちろん、空港があり交通アクセスの良い宇部では、街の暮らしも体験できます。そして、通勤は自動車か自転車なので、満員電車に揺られるストレスから解放され、心地よく働くことができるのも魅力。山間部にある田澤さんの工場では、夏になると川に足を浸けて涼みながらお昼を食べるそうです。

そして何より、人との出会いが大きな魅力。田澤さんが一緒に働く仲間は平均年齢86歳で、皆さんが経験と知恵を教えてくれる大切な存在。そんな“おじいちゃん”に言われた「コンピューターに頼るな、勘ピューターじゃ」という言葉には、自然とともに暮らしてきた人の生き抜く力が表れている、と笑われます。すっかり地域に馴染んでいる田澤さんですが、最初に来た頃はハイヒールにホワイトジーンズという服装で、地元の人とも距離を感じたそうです。しかし、Tシャツと長靴で過ごすようになると距離が縮まり、積極的に輪の中へ入ることで、今ではお祭りでお神輿を担ぐまでに。「楽しんでいたので、努力したという意識はないですが、自分から“開く”ことは大切です」と田澤さん。

素材と人に恵まれた田澤さんの会社の製品のうち、洗濯洗剤とアウトドアミストは、完全にメイドイン山口。2020年には宇部に竹繊維を作る工場を造り、世界初の国産竹繊維を生産することに成功しました。また同年に、竹の総合施設「竹LABO」もオープン。地域の廃校を活用し、竹を扱う事業者向けのインキュベーション施設、シェアオフィス、竹製品のミュージアムなどで構成され、「竹で地域を元気にする」という思いが込められています。「私の考える“エシカルな暮らし”は、“誰も、何も、傷つけない暮らし”山口県だからそれができるのだと思います」と田澤さん。周りの皆さんと一緒に楽しみながら、これからも前に進んでいかれます。

お二人の話の中で、下関と宇部には共通点も多く、さらに「海辺を歩くだけで幸せになる」ことや「水が美味しい」ということは山口県全土に通じると盛り上がりました。特に印象的だったのは、お二人の「自分から開いて、与えることが大切」という言葉。自ら楽しむという姿勢が、山口での暮らしをより充実したものにすると伝えてくださいました。

塩見 直紀 氏

京都府綾部市出身。半農半X研究所代表、総務省地域力創造アドバイザー、北九州市立大学地域共生教育センター特任教員。25年前から、21世紀の生き方・暮らし方として「半農半Xコンセプト」を提唱し、著書に『半農半Xという生き方【完全版】』などがある。地域の魅力等をAtoZや未来の問題集(アイデアブック)にまとめる活動も行う。2021年3月末に奥様の故郷・下関に移住し、「里山暮らし」から「海峡暮らし」に。

田澤 恵津子 氏

東京都出身。エシカルバンブー株式会社代表取締役社長。百貨店、電機メーカー、外資系家庭用品、化粧品会社、広告代理店で商品開発、PR戦略立案等を担当。2006年からフリーの商品企画プランナーとして活動開始。2010年に独立し、竹の有効活用事業に着手。2015年、山口県防府市でエシカルバンブー(株)を設立。竹の未知なる可能性を信じ、竹を活かした究極のエシカルなものづくりを実現しようと日々奮闘中。

  • 「やまぐち」のY、「わいわい楽しい暮らし」のYを組み合わせた、山口県へのUJIターンを意味するキャッチフレーズです。